物書きの備忘貼
■梶省吾と7月の天秤座【Original Sin】


「オレも鈍感な訳?」


梶 省悟 かじ せいご

 

1975.10.08


 正直、彼の話は難儀します。いい加減とも映る人物。しかし、ある意味、彼は『結果』なのです。


梶省吾は『観測の影響力』の持ち主。


 『視る』『得る』に偏る結果、副産物として『未来視』に至った影響力。


 但し、彼は予言などせず。相手を見知るだけで、自身も相手も影響を受けると早くに気付き、他者への関与を減らしてしまった人です。


 興味を持っても深く立ち入らず、波風の立つ言動をしない。自分を開示する事もない。


 例えば「明日は雨かも」との言葉で、人々の動きや思考に大きな影響を与えてしまう。冗談の様な例えですが、周りをよく見てください。誰かの「予言」や「予測」に振り回される人は大勢います。


 梶にとって、影響力を受けない術をもつ怜莉、桜海、國村(修治)の三人が居る『中央』という環境は気が楽なのです。


 根は好奇心旺盛なタイプ。経験を元に理論を組み立てるタイプ。


此処で確認【梶 省悟】のプロフィール


  1. 年齢 32歳(2007年10月8日時点)
  2. 血液型 (未設定)
  3. 身長 184cm前後  体型 普通
  4. 仕事 事務職(監査)・翻訳
  5. 職場 寺院(建物は本堂ではなく本殿)
  6. 出身地 和歌山
  7. 家族構成 両親・妹(既婚・甥・姪) 現在は別世帯
  8. 家庭環境 幼少から国外
  9. 趣味 読書
  10. 特技 外国語
  11. 好きな色 青
  12. 好きな食べ物 空飛ぶヤコブさん

 

 18カ国語を話せると作中にありますが、規準は曖昧。実際には更に多い設定。出身地の和歌山共々、南方熊楠より。『干支の書』も熊楠著書『十二支の書』から題名を借りた形。省吾の名は(せいご)と読み、高塚省悟から。


 梶は七夕由来。笹ではなく、梶の葉です。


 七夕はかっては宮中行事でした。神木、梶の木の葉に、和歌としてスキルアップを願い、したためる。因みに梶の木の花言葉は、過去の思い出。


 2021年末に書き始めたインターネットに続く話。わたしの中で未来視の暫くの、ターニングポイント、キーワードが7月前半である為、選んだ名字。


7月の天秤座


 さて、梶の12星座は天秤座です。見つけにくい夏の星座。8月には西の空に沈んでしまう。


 見つけにくいとは、また異なるのですが、古今東西「見るな」と云われたのに「見てしまう」物語が多くあります。


 いわゆる、見るなのタブー


 行為を強く禁止されると却って欲求が高まる心理現象。カリギュラ効果。今回は話がズレそうなので「ボストンでは禁止」という慣用句を書くまでにしておきます。


─梶省吾は『結果』の存在─


突然語る、天秤座のギリシャ神話。


 では、ざっくりと以後、紹介。


 太古の昔、神々は地上に住んでいました。正義と天文の女神アストレアは、左手に善悪を量る天秤を持っていました。黄金の時代であった地上では人々は平和に暮らし、アストレアの天秤は常に善に傾いていました。


 しかし「全ての贈り物」の名を持つパンドラという女性が「決して開けてはいけない」と云われた箱を開けてしまいます。


 箱の中からは世界中の厄災、疫病、痛苦、悲観、嫉妬、欠乏、罪禍、不和、争いと書き出せない程の災難と不幸が飛び出ました。慌てて蓋を閉めた箱の底。唯一、残ったのは「希望」でした。


 時は、既に遅く、人間は欲深く、他者を羨む様になる一方。自分こそが最も賢く優れていると思い始め、堕落し、奪い合い、やがて戦争を起こすのです。最早、手の施しようが無くなった神々は人間を見限り、天界へと帰りましたが、アストレアだけは地上に留まるのです。


 けれども善悪を量るアストレアの天秤は悪に偏くばかり。互いに憎み、争いに明け暮れる人間に、疲れ果てるアストレア。彼女もまた天上に帰ってしまう。


 そしてアストレアは乙女座となり、使われなくなったとも、今も手にしているとも云われる、彼女の天秤こそが、天秤座となったのです。


 一般的には、見えにくい星座とされる天秤座。それは、人間を愛し、奔走し、しかし、そんなアストレアの掛けた言葉も姿勢も無視とした私達の名残なのかもしれません。


 という訳で、梶に話を戻すと、傍目からは何がなんだか分からない人物としか説明が出来ないのです。


 『視る』『得る』を経て、騒乱の俗と距離を取り、平穏に身を置き、自己を見せない。


 それでも、出会った当時、悩める高校生だった怜莉の面倒を引き受けた様に、梶もアストレアの如く、結局、人間が好きなのだと思います。


 最後になりましたが、人類最初の女性は、旧約聖書ではイヴ。ギリシャ神話ではパンドラです。


 パンドラが持たされ、開けてしまった物は箱ではなく壺であり、残った物は希望ではなく『予兆』あるいは期待のほうがより近いと云われています。


 予兆とは兆し。物事がこれから起ころうと予感させる気配。つまり未来を向いた言葉なのです。


 パンドラの箱が開かれ、力及ばず地上を去る結果になったアストレアの時代から、人間は変わったのでしょうか。


 何よりも、もう確認しようのない『何かを残した箱』は閉じられたまま。


 現在を、過去の『結果』として生きている梶は、やはり説明が難しい人です。


 多言語話者であり、海外暮らしの長い彼が現在、日本で暮らして長く、常に日本語で話している事は不自然でさえあります。


ギリシャ神話のみのエピソードも、梶のバックグラウンドを考慮すれば物足らない。


でも、彼を難しく考える必要はありません。


 梶の一見、何も考えていない風の、飄々とした性格こそ、他者への関与を減らし、狭い世界に居場所を求める姿勢こそ、何かしらを経た彼の現在の答えなのです。


簡単感想箱


登場人物各エピソード


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